全国災害ボランティア議員連盟
●研修 「議員連盟提言を受けて 」
-水害(ゲリラ豪雨)対応と原子力災害に対する避難計画-
提言
近年頻発する「局所的ゲリラ豪雨」は、短時間に大量の降水をもたらします。市町村は避難情報を出す間もなく、住民はいきなりの洪水に襲われ、逃げ遅れる事例が後を絶ちません。
当議連では今夏起きた「越前市東部集中豪雨」(平成16年に被災=激甚災害、本年7月に再度被災)の事例をもとに、国や地方自治体の「洪水予測」「避難判断」の現状を調査・研究し、その結果、局所的ゲリラ豪雨があまりにも極端な現象で、現場自治体が避難情報を住民に発するには、マンパワーの限界があるとの課題確認をしました。水害は「予測ができる災害」だという常識は、もはや通じなくなったととらえ、対策を講じなければなりません。
そのうえで、今後必要なのは、「さらなる国土強靭化のためのインフラ整備」と、「現場自治体に対する国や県の踏み込んだ水害予測支援」、「ゲリラ豪雨に対する住民の理解促進と自衛措置の喚起」が必要だという結論に至りました。
さらに、原子力災害に対する住民避難に関して調査・研究を行いました。
昨年起きた福島原発事故を踏まえ、関係自治体では住民避難をどうするのか、避難計画策定で頭を悩ませています。
そこで原発が集中立地する福井県の現状調査を行ったところ、避難計画策定がなかなか進まない現状の課題を理解しました。また水害同様、いざという時に国から様々なデータや概略的な指針が示されたとしても、市町村の担当課がそれらを消化する知見も人手も不足のではないかとの懸念から、「どうしろというのか。」との切実な叫びが会員の中から漏れ聞こえたほど、まだまだ克服すべき課題は山積していると認識を深めました。
原子力行政は国に責任があることを鑑みれば、机上の計画ではない実効性のある避難の計画を策定するために、さらなる国の覚悟と現場支援が必要です。
以上のような議連としての調査・研究を踏まえ、水害や原子力災害に関し、議連として、国・都道府県・市町村それぞれで今後何が必要かを話し合いました、国会議員・地方議員が集っている当議連として、今回の議論をそれぞれの立場で今後の議会活動に活かして行くことを確認するとともに、国に対して、以下の提言を致すこととなりました。
速やかなご対応をいただけることを切に願います。
提言に対する回答と議論
【国出席者】
内閣府政策統括官(防災担当)付参事官 四日市 正俊 氏
同 参事官補佐 三浦 光一郎 氏
農水省 農村振興局水資源課企画官 川村 文洋 氏
同 農村振興局設計課計画調整室課長補佐 中藤 直孝 氏
総務省消防庁国民保護・防災部防災課課長 赤松 俊彦 氏
同 予防課特殊災害室室長 白石 暢彦 氏
環境省 原子力規制庁課長補佐 刀禰 正樹 氏
国土交通省 水管理・国土保全局
防災課首都直下地震対策官 宮武 晃司 氏
同 水管理・国土保全局
河川計画課河川計画調査室長 渡邉 泰也 氏
同 水管理・国土保全局河川計画課
河川情報企画室課長補佐 根本 深 氏
同 水管理・国土保全局治水課
堤防構造分析官 梅田 和男 氏
(随行)
内閣府 防災担当普及啓発・連携担当主査 筒井
総務省消防庁国民保護・防災部防災課係長 赤澤
同 予防課特殊災害室係長 斎藤
1.地域の治水能力向上のために、国土交通省や農林水産省の壁を超えた総合的
な治水計画を策定し、施策を講じることが必要。
・農業施設と河川・排水施設を効果的に組み合わせ、より効果的な治水のため
のインフラ整備が講じられるように、仕組みを整えることを提言します。
(国土交通省・農林水産省合議)
地域の治水能力向上のためには河川の整備に加えて、農地や森林など流域の持つ保水・遊水昨日の確保、災害の発生の恐れのある地域での土地利用の誘導及び警戒避難体制の確立、農業水利施設との連携等の総合的な治水対策が重要であると考えており、必要に応じ農林部局など関係行政機関との協議会を設置するなど連絡調整を図りながら計画の策定を行っているところです。
今後とも関係行政機関と十分な連携を図り、河川の特性や地域の実情に応じた効果的な計画の策定、施設の整備・運用に努めてまいります。
(回答補足) 今のままでよいとは思っていない。各地域の特性、歴史を考えて効率的に計画していきたい。各地域にある農林事務所や各自治体と連携をとって計画していきたい。
・最近の被害は市町村管理のところが多い(農業用水等)。堰の管理は地元だ
が高齢化等により管理が難しくなっている。
(国)実情の把握が大事であり、実情をふまえてやっていきたい。管理の自
動化も含めて検討中ではあるが、お金がかかるのも事実。
・獣害等によってメインの川に保水力がなくなってきている。
(国)流域全体で総合的にマネジメントしていきたい。
・田圃を遊水池扱いできないか。前もって契約しておけないか。
(国)地域での議論、プロセスを経て手法としてはいいのではないか。国と
しては交付金も用意してある。
2.局所的ゲリラ豪雨に対する適時性のある避難判断のために、地方自治体への
支援を強化することが必要
・国を網羅するXバンドレーダー等の整備を行ったり、降雨の実測データをき
め細かく得るための水位計設置などの施策を講じたり、現場への踏み込んだ
アドバイスを行ったり、さらなる支援策を求めます。
(国土交通省)
○国土交通省では、集中豪雨や局地的大雨(いわゆるゲリラ豪雨)に対する監視を強化するため、局所的な雨量をほぼリアルタイムに観測可能なXRAIN(XバンドMPレーダネットワーク)の整備を進めており、平成25年3月現在、全国27基の配信体制を構築し、地方自治体、住民への情報提供を行っています。また、現在11基の整備を進めており、観測エリアの拡大に取り組んでいます。
○水位計については、洪水時の河川の水位を適切かつより細かく把握するため、現在、観測所の機能強化等を進めており、自治体、流域住民への情報提供の充実・強化に取り組んでいます。
○また、全国の地方整備局の水災害予報センターや河川事務所において災害時の情報提供を行うとともに、地方自治体の災害対策本部へのリエゾン(連絡員)派遣を行うなど、地方自治体の災害対応を支援しています。
○今後とも、これらの施策を推進し、地方自治体の支援充実に取り組んで参ります。
(総務省消防庁)
避難勧告等に係る具体的な発令基準の策定状況について、毎年調査を行い、結果を公表するとともに、基準の策定が進んでいる都道府県の先進的な取組事例の紹介等を行っているところです。
(回答補足) Xバンドは、範囲は狭いがきわめて高性能であり、場所についてはHPに載せている。避難勧告等は市町村の役割であるがどういう規模で勧告等するかの発令基準等ソフト支援をしていきたい。3については交付税措置等、ハードの支援をしていく。
・Xバンドの効果は?
(国)今まで10~15分かかっていたものが1~2分で観測値を出せる。
上空の雨の塊を観測できるよう研究改良中であり、気象庁にもとりこん
でもらうよう協議中。
・ゲリラ豪雨での行政の責任範囲は?
(国)サイレンセンサーを改良中ではあるが、アラームが鳴ってもだれも逃
げないことが問題で、住民への周知徹底が必要。ハザードマップは当然
で今後は防災教育等考えていかなければならない。ワークショップ等作
って小さな地域で考えていってほしい。専門家を派遣するなどの支援も
していきたい。
3.ゲリラ豪雨に対する住民や市町村の理解を促進し、自衛措置に対する支援を行うなど、自助努力を喚起する対策を講じることが必要
・耐震補強に対する支援同様、水害に対して行う防護措置に対し、支援策を求
めます。
(例)家屋や事業所、保育所などの公的施設などが、洪水防御の塀を作った
り、床のかさ上げをしたりする自衛措置の促進支援を求めます。
(国土交通省)
○集中豪雨や局地的大雨(いわゆるゲリラ豪雨)に対しては、河川管理者による対策のみならず、市町村や住民、事業者等による流域対策が必要であり、これらの促進策を講じることが重要と考えています。
○市町村が行う水害対策に対しては、防災・安全交付金により、①輪中堤の築造や住宅移転に対する費用助成、②貯留浸透施設の整備、及びこれらの事業に併せて実施するハザードマップの作成や水防資機材の購入などを対象に財政支援を行っており、引き続き支援に努めて参ります。
○また、民間事業者に対しては、三大都市圏及び人口30万人以上の都市で雨水貯留浸透利用施設を設置した場合に、5年間10%の割増償却(所得税、法人税)を可能とする税制の特例措置を設けているところです。
○さらに、事業者による自衛水防を促進する観点から、地下街や高齢者等が利用する施設、大規模工場等の事業者に対して、水防訓練の実施や自衛水防組織の設置などを促し、自衛水防組織に対しては水防管理者(市町村長等)から水防に資する情報を直接伝達する、といった内容の水防法改正を予定しています。
○今後とも、住民や事業者等による自衛措置が促進されるよう、引き続き財政面や法令上の措置を行います。
(総務省消防庁)
ゲリラ豪雨時に住民の方々が一時避難する避難収容室や住民の方々へ提供する食料等を備蓄する倉庫の改造・改築など、避難所の防災機能の強化に資する事業について、地方債と地方交付税による地方財政措置を講じています。(緊急防災・減災事業)
・都市部に緑をふやす施策が必要
(国)森林を守る施策、都市農業の推進等やっていきたい
4.原子力災害時の避難計画策定にあたり、現場(関係地方自治体)が実効性の
ある計画を立てることができるよう、きめ細やかな支援を行うこと。
・地方が地域防災計画を策定するには、国が細かい判断基準を示さなければ進
められないことが、現状、多くあります。国は地方の声をよく聞き、自らの
責任において、地方の求めすべてに回答を示していただきたい。
(例)ヨウ素剤の服用に関し、参考事例は示されましたが、具体的には地方に
判断を委ねることも検討されています。国が国の責任において、指針を詳
細示すべきだと考えます。
(原子力規制庁)
自治体における地域防災計画の策定が円滑に進み、地域の原子力防災体制が一日でも早く整備されるべく、国としては今後とも、 ・地域防災計画策定の参考となるマニュアルの提示 ・現地に駐在する防災専門官による助言の強化 ・複数の自治体に跨がる広域避難計画の調整を行う協議会の開催など、自治体に対する必要な支援をしっかりと行ってまいります。
(回答補足) 地域防災計画はほとんどの都府県、3/4の市町村で策定済。地域での課題に指針を示し、地域防災計画に基づいて現実に即した訓練支援をやっていきたい。原子力対策指針見直しは6月をめどに改定予定、その中で細かい指針を示していく。
・モニタリングの数値を示すだけでなく非難の判断基準を示してほしい。
(国)2月に考え方は示した。実務的には検討課題であり、早くまとめた
い。
・広域避難について、国が主体となって考えていってほしい。
(国)県を超えた市町村の調整をしていきたい。
・自衛隊や海保との連携をとった訓練、オフサイトセンター支援等を要望す
る。
(国)計画をより実践的なものにしていきたい